2004年6月13日日曜日

学生の気づき

1

昨日社内で開いたあるセミナーで講師が面白いことを言っていました。

その講師はあちこちの大学でマーケティング関係のゼミを持っているらしいのですが、 学生の態度は偏差値に比例するのだそうです。

「ふ~ん」と思いながら聞いていたのですが、偏差値の芳しくないある大学の授業では、

「どういうテーマをやってみたい?」と聞くと「別にぃ」という返事。「じゃ、どういう分野が好きかな」と聞くと「別にぃ」

ここは攻め方を変えてみようと、気を取り直して「キミ、さっきカップヌードル食ってたねえ。好きなの?」と聞くと、「別にぃ」

全然会話にならないそうです。断っておきますが、その講師は話も面白いし、巷では新進気鋭のコンサルタントとして有名なんですよ。

ところが夏休みが終わって新学期がはじまると、その同じ学生が「先生、俺サービスについて研究したいんだけど」
と言ってきたりするんだそうです。おまけにリーダーシップをとってクラスをまとめちゃったりするんだそうです。

「ええっ。キミ何かあったの?」と聞くと、その大学は東京ディズニーランドが近いので夏休み中にバイトする学生が多いらしいのですが、その学生は「カリブの海賊」をやってたらしいんですね。最初は普通にやってたらしいのですが、子供が喜んでくれる。ちょっと気分がよくなってオーバーアクション気味にやると、子供たちがもっと喜んでくれる。思い切りオーバーアクションでやったら子供にも大人にも大ウケだったようなのです。喜んでくれることがうれしくていろいろ工夫するようになったのだそうです。

その学生曰く「これまでの人生で誰かに喜んでもらうことなんてなかったから」。

講師によると、外から与えられたものは決して身につかないそうです。その学生は、自分で気づいたことだから二度と忘れはしないだろうと。

そうなるともう偏差値は関係ないんだ、というお話でした。

何かと引き合いに出される東京ディズニーランドですが、教育についても学ぶことはありそうです。

2

この話をあるBBSで書いたら、「『気づき』って年を重ねることに増えてくるような気がします」という方が複数いました。

そう言えば、糸井重里氏と池谷裕二氏(東京大学薬学部助手、大脳生理学)の対談書『海馬/脳は疲れない』(朝日出版社)によると、「脳は30歳を超えたところで、飛躍的にネットワークを密にしていく」そうです。

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一般に脳の神経細胞は一日に10万個ずつ死滅していくと言われていますが、脳の中で記憶を司る中枢である「海馬」だけは唯一神経細胞が増えていくんだそうです。

そして海馬の神経細胞が増えれば増えるほど、ネットワークをつくる密度も飛躍的に高まっていく。

「気づき」というのは、ある意味である事柄と別の事柄をあたまの中で結びつけることですから、最近「気づき」が増えてきたという実感はあながち根拠のないことではないようです。

これを言い換えると、年を取るほど頭の働きは活性化する、ということですよね。希望が沸いてきます(笑)。

あ、しかしそうすると子供に「気づき」を促すのはむずかしい、という話になっちゃうのか?

3

よく子供や若者に向かって「なんでそんなこともわからなかったんだ!」と怒る局面があります。

当然予測できた結果を考慮せずに行動して失敗した場合によく使うことばです。些細な話でいえば、小さな子供がテーブルの下にもぐっていて、何を思ったか立ち上がったとたん頭をぶつけて泣き出した、なんてことがよくありますよね(え? 大人でもある? テーブルの下で何やってたんですか!?)。

「こうなってこうなったら、必然的にこうなるだろう!」というのが大人の考え方なのですが、

先ほどの「30歳を超えると海馬の働きは飛躍的に高まる」という話からすると、30前の若者や子供には、その必然性が頭の中で容易にはつながらないものなのかも知れません。

「なんでそんなこともわからなかったんだ!」と私たちは思うわけですが、それはやっぱり「わからなかったんだよ」というのが真相なのかも。

子供に記憶させるためにはくりかえしくりかえし教えるしかないんでしょうかね。

そう考えると政治家に老人が多いのもわかるような気がします。

こちらは聞いてもあまり元気が沸いてこない話ですが...。